採用コストが減らない本当の理由|「採って、辞めて、また採る」を止める会社の伝え方

「採用コストを、もう少し下げられないだろうか」

 

採用に悩む経営者や人事担当者なら、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

 

求人広告を見直す。
採用媒体を変える。
エージェントの使い方を考える。

 

もちろん、どれも大切です。

でも私は、会社説明会や採用の「伝え方」に関わる中で、もう一つ見直してほしいことがあります。

 

それは⋯

「なぜ、また採用しなければならなくなったのか?」

ということです。

 

採用する。

せっかく入社してもらったのに、辞める。

人が足りなくなる。

そして、また採用する。

 

「採って、辞めて、また採る」

 

このループが続いている限り、1人あたりの採用費を多少下げても、会社から採用コストはなかなか消えていきません。

 

問題は、「どう安く採るか」だけではないのです。

「1人辞めただけ」が、最大640万円の損失になる

エン・ジャパンが公開している「早期離職のリアル2025」に、非常に興味深い数字があります。

 

入社から半年で社員が離職した場合、企業が被る損失は最大640万円。

出展:https://discoverhr.en-japan.com/grc_2025/

 

採用にかかった費用だけではありません。

 

採用活動、入社後の人件費や教育など、その人を迎えるために会社はさまざまなコストをかけています。

 

だから⋯

「100万円かけて採用した人が辞めたから、100万円の損失」

という単純な話ではありません。

 

そして人が足りなくなれば、また求人を出し、また採用活動を始めることになります。

 

私はここに、採用コストを考えるうえでの大きなポイントがあると思っています。

 

100万円の採用を80万円にすることだけを考えるのではなく、そもそも「何度も採り直す状態」になっていないか。

 

ここも一度、見直す必要があるのではないでしょうか。

なぜ「採って、辞めて、また採る」が起きるのか

もちろん、社員が会社を辞める理由は一つではありません。

 

人間関係かもしれない。
待遇かもしれない。
仕事内容かもしれない。
職場環境かもしれない。

 

ですから私は、

「会社説明を変えれば、早期離職はなくなる」

と言いたいわけではありません。

 

ただ、会社説明の「伝え方」を専門にしている私として、どうしても見過ごせないデータがあります。

 

早期離職理由の1位は「入社前に聞いていた情報と違った」

先ほどのエン・ジャパンの調査では、早期離職の理由として最も多かったのが、

「入社前に聞いていた情報と違った」38%

でした。

 

これは、採用する前の「伝え方」と無関係とは言えない数字だと思うのです。

 

会社は伝えたつもりだった。

求職者も理解したつもりだった。

でも、入社してみると、

「思っていたのと違った。」

このズレが起きる。

 

だとすれば、採用コストを考えるとき、求人広告費や紹介料だけではなく、

「入社前に会社のことを、どう伝えていたのか」

まで振り返る必要があるのではないでしょうか。

良いところばかり伝える会社説明が、ミスマッチを生む

採用したい。

 

そう思えば思うほど、会社は自社の「良いところ」を伝えたくなります。

 

「働きやすい会社です」

「成長できる環境があります」

「社員同士の仲がいいです」

「やりがいのある仕事です」

 

もちろん、事実であれば伝えていい。

 

むしろ、しっかり伝えるべきです。

 

ただし、私は会社説明を設計するとき、良いところだけを伝えることは勧めていません。

 

なぜなら、仕事には必ず大変な部分もあるからです。

 

覚えなければならないことが多い。

繁忙期は忙しい。

仕事によっては体力も必要になる。

お客様から厳しいことを言われることもある。

 

そうしたことを隠して、

「うちは、とてもいい会社ですよ」

と伝えて入社してもらったとしても、あとで本人が現実を知れば⋯

 

「そんな話、聞いていなかった」

となってしまいます。

 

実際、エン・ジャパンの同調査で「どんな条件があれば辞めなかったと思うか」を聞いたところ、最も多かった回答は⋯

「事前にネガティブな情報も聞いている」44%

でした。

 

採用だからこそ、良いことだけではなく、会社のリアルを正直に伝える。

私は、ここが非常に重要だと考えています。

ただし、「悪いことも全部話せばいい」ではない

では、会社の大変なところを全部並べればいいのでしょうか。

 

「うちは残業もあります」

「仕事はかなり大変です」

「最初の半年は覚えることだらけです」

 

これを最初から次々と話したら、正直な会社にはなるかもしれません。

 

でも、それで求職者が、

「この会社で働いてみたい」

と思うでしょうか。

 

ここで必要になるのが、私が会社説明をつくるときに最も重視している、

「誰に、何を、どんな順番で伝えるか」

という設計です。

 

同じ事実でも、伝える順番によって受け取り方は変わります。

 

なぜ、この仕事が必要なのか。

どんな人がお客様なのか。

どんな喜びがあるのか。

その一方で、どんな大変さがあるのか。

会社は、その大変さに対してどんな支援をしているのか。

そして、その仕事を経験することで、どんな成長ができるのか。

良いことも悪いことも含めて、求職者が理解できるように組み立てていく。

 

正直に伝えることと、伝え方を設計することはセットです。

目指すのは「辞めない人」を説得することではない

ここで、もう一つ大切なことがあります。

 

会社説明の目的は、

何が何でも入社してもらうことではありません。

 

私はプレゼンの目的を、

「理解 → 共感 → 行動」

と考えています。

 

これは採用でも同じです。

 

まず、会社のことをきちんと理解してもらう。

良いところも、大変なところも知ってもらう。

 

そのうえで、

「それでも、ここで働きたい」

あるいは、

「ここなら働いてもいいかも」

と思ってもらう。

 

私は、この「共感」が非常に重要だと思っています。

 

逆に、会社のリアルを知った結果、

「自分には合わない」

と判断する人がいてもいいのです。

 

その人を無理に説得して入社してもらい、数か月後に、

「思っていた会社と違った」

となる。

 

それは本人にとっても、会社にとっても幸せな採用とは言えません。

 

入社してから選び直すのではなく、入社する前にお互いが選べる状態をつくる。

会社説明には、そんな役割もあると私は考えています。

採用費は使えば消える。でも「伝え方」は会社に残る

ここまで考えると、私は「採用コスト」という言葉の見え方が少し変わってきます。

 

求人広告も必要です。

採用媒体も必要です。

エージェントが必要な会社もあります。

私は、それらを否定するつもりはまったくありません。

人と会社を出会わせるためには、大切な投資です。

 

ただ、それとは別に、

会社自身が「自分たちの会社をどう伝えるか」を磨くことにも、もっと投資していいのではないか。

 

そう思っています。

 

会社の魅力は何なのか。

求職者に何を知ってほしいのか。

良いところだけではなく、何を正直に伝えるのか。

どんな順番なら理解してもらえるのか。

どんな資料なら、その話を伝えやすいのか。

 

ここまで一度きちんと設計すれば、それは一回の採用活動で消えるものではありません。

 

次の会社説明会でも使えます。

翌年の採用でも使えます。

 

そして、社長だけではなく、人事担当者や現場の社員にも共有できます。

 

さらに、設計された資料そのものが、

「何を、どんな順番で話せばいいのか」

を再現するためのガイドにもなります。

 

だから私は、会社の「伝え方」は単なるテクニックではなく、

会社に残していける資産

だと考えています。

 

採用するたびに費用を払い続けるだけではなく、採用活動をするたびに、

会社の伝え方が少しずつ磨かれ、会社の中に残っていく。

そんな採用に変えていくこともできるはずです。

「採って、辞めて、また採る」から抜け出すために

採用コストを削減しようと思ったとき、

「求人広告費をどう下げるか」

「紹介料をどう抑えるか」

を考えるのは当然です。

 

でも、そこで一度だけ、別の問いも持ってみてください。

 

「なぜ、また採用しなければならなくなったのか?」

 

入社前に、会社のリアルをきちんと伝えていたでしょうか。

 

良いところだけではなく、大変なところも伝えていたでしょうか。

 

そして、それをただ並べるのではなく、

求職者が理解し、共感し、自分で判断できる順番で伝えていたでしょうか。

 

「採って、辞めて、また採る」。

 

このループを止める方法は、会社によって違います。

職場環境を変える必要がある会社もあるでしょう。

待遇や制度を見直す必要がある会社もあるでしょう。

 

そして、その中には、

「会社の魅力やリアルが、採用前にきちんと伝わっていない」

という会社もあるはずです。

 

採用コストを見直すなら、

「採用費」だけではなく、「会社の伝え方」も一度見直してみてください。

「うちの会社説明も、一度見てほしい」と思われた方へ

「自社の良さを伝えているつもりなのに、なぜか求職者に響かない」

「採用しても、入社後に『思っていたのと違った』が起きている」

「会社説明会や面接で、何をどんな順番で伝えればいいのか分からない」

 

そんな場合は、会社説明そのものを一度見直してみませんか。

 

採用サイトや資料を作り直す前に、まずは、

誰に、何を、どんな順番で伝えるのか。

 

そこから一緒に整理します。

 

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